地球温暖化と東京の果樹・野菜生産を聞いて [講演会]
先日、畑で開花準備の花芽整理をしていると、農業改良普及センターの先生から電話がありました。東京都農業試験場の成果発表会が今開催されているので、行ってきたらどうか?と言う連絡だった。
農研機構の杉浦俊彦先生による温暖化に向けた東京農業という特別講演も開催されるという。昨年、パッションフルーツを作り始めた私にとって、とても興味深い内容なので行ってみました。
地球温暖化=暑くなる という私の幼稚な考えは打ち砕かれ、しっかりと気候の変動を受入れ、適正に対処しなければならないなと考え直しました。
先生は概況→作物への影響あれこれ→実際の対応策 と言う順に説明されました。非常に説明が系統化されていて、分かりやすかったです。
梨の温暖化対策について、水ストレスが説明されました。水ストレスは梨品種「あきづき」のコルク症や水なし症の原因のひとつと研究されています。
水ストレスは土壌の乾燥と高温のどちらが許容値を超えても発生します。また、植物にとって、この二つの環境が重なり、ダメージを大きくすることもあります。植物は葉面の気孔を開け蒸散を行うことで、根から養分を吸い上げ、光合成を行い、葉の冷却を行います。晴天が続き、植物周辺の水分が少なくなると、樹体の水分保持のために気孔を閉じます。このような状態が長期にわたり続くと植物体の温度が上がってしまい、実の生理障害や、樹体の衰弱をおこすようです。(https://jspp.org/hiroba/essay/kinoshita.html 参照)
梨農家として、展葉期から水分の管理を続けることの重要さを深く考えました。又実際の温暖化対策stage1のなかでは、ぶどう着色向上のための技術として環状剥皮処理。対策資材としてABA(アブシジン酸資材)の登録完了が間近であることも伺うことができました。栗の木の「株ゆるめ処理」など、はじめて聞く技術にも大変驚きました。いろいろな情報を集め、安定した果樹生産ができるよう心掛けたいと思います。
■講演の概要
概況
温暖化が進んでいると言われます。気象庁が1980年と現在では平均0.71度気温が上昇していると発表しています。都内23区ではヒートアイランド現象もあり、これよりも平均気温が上昇しています。さて、地球温暖化が農業に及ぼす影響とは何でしょうか? 気温について取り上げられることが多いですが、降水・降雪・台風と言った現象も農業に対して大きな被害をたらしています。
それは量的な問題だけではありません。近年の降水は降るときはまとまって降り、一旦晴天が始まると長期にわたり雨が降らないことがあったり、降雪においては、数日間にわたり降る積算量と同じ量が短期間に降ることで、施設の倒壊、立木の欠損を発生させます。気象庁は今後、全世界的に台風の発生数は減少するものの、21世紀末に*1*2カテゴリー4の台風が日本の近くを通過する10年当たりの平均数は現在の3から5に増加すると予測しています。
作物への影響~
梨・・北関東の調査では幸水の開花日が調査開始以降、最速を記録した。(過去、最も遅い開花は5月11日であった)
梨・・幸水にて、熟期が早まり、収穫適期を迎えているにもかかわらず、地色(青み)が消えないために、収穫遅延となり、貯蔵性の悪化・みつしょうの増加を誘発してしまった
キャベツ・・夏まき冬どりキャベツに関して、30日ずらして収穫を予定して播種したものが、発育が早まったため、20日しか収穫がずれず、価格が安くなってしまった
②光合成が増えたり、減ったりする
野菜には栽培最適温度がある
例) はくさい 15~20度
ブロッコリー 15~20度
この温度より高くなると、大きくなりすぎてしまったり、葉根菜類では発育不良が発生したりする
③高温障害
ぶどうの日焼け
柿の日焼けなどが問題視されている
④水ストレスによる発育停滞
柿(富有)の光合成停止・・調査グラフでは樹勢の落ちた樹において、日が昇り気温が上昇すると光合成を停止してしまう事例が報告された
⑤病害虫
今まで、東京よりも南の地域に生息していた虫が増加し、作物に被害を及ぼす
今までの気温では、発生しずらかった病気が顕在化し作物に被害を及ぼす
実際の温暖化対策
※状況に応じてステージ別に次のように説明されました
Stage1 栽培作物に軽度の影響が生じた時期
①栽培技術により、対策を講ずる
梨・・凍害耐性を高めるため秋肥の施用を春肥に変更する
リンゴ・・着色向上を促進するため窒素肥料の施肥時期を変更する
果樹において・・暗渠や明渠などを設備し、樹勢を向上させ、高温耐性を強くする
栗・・*1株ゆるめ処理で耐寒性を高める
②温度を抑制する設備・資材を利用する
作物全般・・遮光ネットで太陽光を遮断して温度上昇を抑制する
ぶどう・・クラフト笠紙・遮光掛け袋の利用で日焼けを防止する
岡山桃・・チタン掛け袋の利用により日焼け防止実証されている
Stage2 影響がすすんだ時期
野菜においては、温暖化に特化した品種を検討する
しかし、定植から収穫開始までの期間の長い果樹では難しい
果樹では高接ぎ更新で効果の高い品種を選択する。
リンゴ→秋映 梨→凜夏
Stage3 影響が非常にすすんだ時期
栽培作物を変更するとして、次の作物が説明された
スイートオレンジ
パッションフルーツ・・島しょでは栽培が普及しており、特産物となっている
アボガド・・現在人気が急上昇している。メキシコからの輸入が多いのが現状
アテモカ
マカデミアナッツ
2019-03-10 14:33
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