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梨の掛け袋 よくわからなくないですか? [よりみち]

年もあけると、剪定作業や施肥、確定申告と急に慌ただしい気持ちになります。この時期、梨の掛け袋の注文書を提出するのですが、いろいろ種類があって、どれを選んだら良いのか正直わかりません。どうしても一枚の注文書でまとめるので、情報もあまり載っていなくて・・・

 私たちの地域で使っている梨の掛け袋を種類別にまとめてみました。

※1 ①:一重(ひとえ)の袋  ②:二重になっている袋 ※2 小林製の(ビ)は上部横向き止め金タイプの表示です

1.②青梨用 二重袋 1-LX(ビ)ミシン【小林製袋製】※1、※2

 特徴:青梨に特化しており、果実つるつるとした表面となる。

所感:当産地では二十世紀などの青梨に小袋かけをする人は殆どいません。もともと、二十世紀を作る生産者が少なかったため、いまでも青梨はあまり作られていません。そのような中、唯一青梨用の果実袋です。果実の蒸散を抑制するため果皮にコルク様のザラつきが少なく仕上がります。

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2.ハトロンワックス防虫袋止め金入り■ハトロンXシリーズ■【小林製袋製】

特徴:色むらが少なく光沢のある果実に仕上がり、熟色判定はミシン目から破袋して行う。

所感:我々の産地で、早生、中間期に収穫される赤梨に最も使用されている袋。左の青い止め金がついている袋は比較的新しいタイプです。中・右の縦の埋め込み式止め金に比べ、袋掛作業の時間が短縮できるという意見が多く聞かれます。実際に使ってみると縦型の止め金は一度向きを横にする手間がありますが、横型は袋の口を束ねると同時に固定できる感じがします。力の弱い女性からも評判が良いです。一つ気になるのは、袋のサイズより一回り小さい容積になってしまう事です。

IMG_E2433.jpg左の

3.Eクラフト 超特大(ビ)188×215mm【小林製袋製】

特徴:日焼け果実の減少が期待できます

所感:実際に私はテスター程度の枚数しか使っていないのですが、仲間内では、日焼け防止の効果に大きな期待はできないという声も聞こえます。以前は、このサイズの一重袋が小林製袋より販売されていました。紙質は 2.ハトロンXシリーズと同じでした。メーカー販売停止になったのか、販売店が扱わなくなったのか、注文書から消えてしまいました。

 当産地で最も大きいサイズの袋ですので、新高などで大玉を狙う方には向いています。個人的ではありますが、ナシヒメシンクイの被害を受けにくい袋だとは思っています。ナシヒメシンクイは孵化すると、移動し、突き当たった所から侵入する傾向があります。果軸付近や花絞り部で被害を受けやすいのはその為だと思っています。赤道面にミシン目のあるタイプの袋でミシン目付近から侵入した形跡をよく見かけます。摘果忘れでサクランボのようにぶつかっている部分がシンクイの被害を受けているのは、どなたも見かけていると思います。


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4.②1-LWP特大ミシン(ビ)
特徴:破袋作業軽減袋(横ミシン目入り)軽遮光型2重袋
所感:1.②青梨用 二重袋 1-LX(ビ)に似ていますが、内袋の紙質がクラフトとロウの中間的な性質です。新高用となっていますので、内袋の紙質を工夫してあるのだと思いますが、サイズが少し小さい感じがします。近年、甘太や爽甘など果皮色が掛け袋の影響を受けやすい品種では、思わぬ好結果がでるかもしれません。二重袋は破袋作業がし難いので、ミシン目が入っているのは使いやすいと思います。
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5. 1-LP(ビ)止め金付き シリーズ 【小林製袋製】
1-LP特大ミシン(ビ)・1-LP超特大ミシン(ビ)
特徴:軽遮光型の袋で赤梨特有の艶のある果実に仕上がり、一重袋と比較して糖度低下がない。色づきが早すぎるので、はやもぎに注意してください。
所感:二重袋で内袋に赤いパラフィン紙を使っているのが特徴的です。赤いパラフィンは、果皮を赤く仕上げる効果があるようです。更に、パラフィン質ですので艶や木目も細かく仕上がると思います。果皮色を均一に仕上げるには、とても良い袋ですが、特徴にもあるとおり「はやもぎ」に注意する必要のある袋です。
 梨は軸の近くの果皮に青みが残っていると市場では価値が落ちるようです。この袋の開発意図はそこにあることに留意してください。図の通り、梨はお尻の部分から軸の近くの肩にむかって熟してゆきます。この袋を使うと、肩の部分が実際には熟していないのに、色がつきます。そのため、直売で購入後すぐに召し上がるお客様には糖度の低い果実を提供してしまうことになります。直売中心の産地としてはよく注意する必要がありそうです。
 もともと糖度の高い品種には最適ですね

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6.NK防虫止め金入り 【小林製袋製】
特徴:収穫機に袋の上から熟色判定が容易にできる。仕上がりは無袋に近い。
所感:早生の梨で利用が多いです。8月・9月・10月に収穫する品種と早生の梨を混植している場合、薬剤散布が収穫期と重なってしまうことがあります。破袋しないでも熟度が判定できるこの袋はとても重宝されています。ただし、近年、夏の高温により、実が蒸れてしまうことがあったとの話を聞きました。もちろん年による差はあるのでしょうが、ご注意ください

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7.②防虫二重袋止め金入り 87シリーズ【トリカ製】
87-LH・87-XL・87-2L
特徴:遮光性と通気性が良く日焼けの少ない熟色のそろった食味の良い果実になる
所感:トリカ製の二重の袋です。内側の紙質はクラフト紙を薄くしたような感じで、通気性の良さを感じます。一般的に通気性の良い袋は、果皮の蒸散を促すため、表面が若干ザラザラとして仕上がりますが、糖度が下がりにくいと言われます。一方、通気性の悪い袋は表面が綺麗にツルツルした感じに仕上がりますが、袋の中の湿度が保たれるため、蒸散が緩慢となり、糖度は少し落ちると言われています。
 小林製の二重袋には内側のタイプの異なるものが何種類かありますが、トリカ製はこのタイプの紙質の袋だけを取り扱っているようです。
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7.①防虫一重袋止め金入り 97シリーズ【トリカ社 製】
特徴:袋の底中央を点貼し、ミシン目を入れていることから容易に袋底を剥がして、熟色判定できる。
所感:底の部分のつくりが、とても独創的で破袋はし易いです。し易いが為に難点もあります。大きくなる品種で使用すると、果実肥大に伴い、早い時期に底部の糊が剥がれて開いてしまうことがあります。破袋したことを気がつかずに、水和剤など鉱物粒子の多い薬剤を使用すると、薬の付着が目立つことがあります。梨のサイズ又は袋のサイズを考えて使用すると良いです
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まとめ・・・青梨では袋掛は不可欠な作業ですが、赤梨に袋をかける産地は少ないようです。また、糖度が下がるのでは無いかと心配される方もいらっしゃいますが、それほど問題にはなっていません。何よりも、袋を掛けた赤梨は艶があり、目でも楽しめ、贈答用の梨にはとてもオススメです。また、文中にも書きましたように、近年交雑が複雑化した新品種には果皮色がゴチャゴチャした品種を散見します。もしかすると、各メーカーさんの工夫でとても美しい外見に変身するかもしれません。これからも、掛け袋に注目してゆきたいと思います


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