有機物の連用と土壌機能の向上 講演を聴いてきました [講演会]
「もっと知りたい環境保全型農業」~上手な土づくりを考えよう~ という東京都のフォーラムへ行ってきました。農工大の豊田剛己(とよだこうき)先生のお話がとてもおもしろかったのでご紹介します
●私が感じた事
なぜ穀物が足りなくなってしまうのかを身近な問題ととらえました。そして、有機物と言っても過ぎたるは及ばざるがごとし、適正な量を施用して持続的な農地を作らねばならないと思いました 。
(以下は豊田先生の講演の要旨です)
「有機物の連用と土壌機能の向上」
最近、肉が手軽になったと思いませんか?
街には色とりどりの野菜や果物が並び、食料危機など想像もできません。 しかし肉が手軽になったと言うことは、大量の穀物が飼料として使われていると言うことです。では穀物の供給量を増やせばいいのですが、それは土壌の養分を使うことになります。古代エジプトやメソポタミアが崩壊したのは、人口を賄う農作物を作る量が多くなり、やがて不毛の地と成り、砂漠化したことが原因とも言われています。勿論、10年20年で土壌養分が消滅することはありませんが、長い間には枯渇してゆく可能性があります
江戸時代の日本はとても上手に農業を行っていました。数百年にわたり、玄米収量が150kg/10aを維持してきました。養分の供給量を計算すると窒素6kg(雨と灌漑水で3kg 籾殻などの有機物で3kg)が毎年供給されており、これは150kgの玄米生産量の必要養分と一致します。
限られた農地の地力を低下させないためには、土づくりが必要になります。養分供給能(地力)を高めるには微生物を作ることが大切です。微生物はえさを入れることにより活性し、増殖します。微生物のえさである堆肥や緑肥の投入することが重要です。
有機物を連用した土壌は環境ストレスを受け続けても、微生物を温存したり、土壌消毒剤や環境ストレスにさらされた後の回復力が高まることが研究でわかっています。
又、東京農工大学における20年にわたる堆肥連用土壌においては、全炭素量・全窒素量・有効水分量が改善された上、一部の病害に対して、抑制能を期待できる傾向がみられました。
今後の環境保全型農業のあり方を踏まえたとき、「有機物の過信」は禁物である。堆肥連用は積極的に取り入れるべきだが、過剰な施用は「地下水の硝酸汚染」を招くことにもなる。土壌機能の向上、農薬使用量の削減を実現するためにも推奨使用量を守った施用を心がけてほしい。
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